借金の一本化(借り換え)の落とし穴―そもそも減額効果は得られない
「借金の一本化」や「借り換え・おまとめ」と銘打った金融商品には、今後生じる利息をわずかに減少させること以外の減額効果はありません。十分な収入を確保できないまま安易に利用してしまうと、かえって残債を増加させてしまうでしょう。
一日でも早く完済したい人こそ、一本化の利用はリスクを理解した上で慎重に検討しましょう
借金をまとめる(借り換え・一本化)とは
そもそも「借金の一本化」とは、低金利ローンの新規契約または取引中ローンの増枠を行い、その借入金を他社債務の返済に充てることを指します
借金の一本化を用途としてキャッシングを提案する金融機関(銀行や消費者金融)も多数存在し、金利が安くなることだけでなく「返済日管理が楽になる」というメリットも打ち出されています。
【借金の一本化のイメージ例】
※返済期間3年・元利均等返済(一般的なキャッシング商品の返済方式)
【現在ある借金】
- A社:80万円(年利18%・毎月返済額28,921円・総返済額1,041,176円)
- B社:50万円(年利8%・毎月返済額18,026円・総返済額648,918円)
- C社:10万円(年利15%・毎月返済額3,466円・総返済額124,773円)
- 毎月返済額の合計:50,413円
- 総返済額の合計:1,814,867円
【一本化後】
- D銀行:140万円(年利14%)
- 毎月返済額:47,848円(-2,565円)
- 総返済額:1,722,536円(-92,331円)
借り換え・一本化のメリット
複数あった借入件数を1本にまとめるメリットは、契約金利が低下することで毎月返済額・総返済額ともに安くなることです。収入の余裕しだいでは繰り上げ返済によって完済日を早められ、ますます返済負担減の効果が高まるでしょう。
一見すると債務整理と同様の効果があるように思えますが、実際はどうでしょうか。
借金一本化のリスク
借金の一本化の利用に適しているのは、あくまでも「一本化以前の時点で家計収支に十分な余裕がある人」に限られます。実質的に残債が減るわけではない点から、すでに生活を切り詰めなければ返済できない状況に陥っている人には適しません。
無理に借金をまとめて返済を継続しようとすることで、以下のようなリスクを負うことになります。
総返済額はほとんど変わらない
借り換え先の低金利ローンも営利目的で運用されているものであり、金融機関の利益を優先して金利設定されています。
一本化を実施したところで、法定金利の切り下げ分(最大で年利5%低下)しか期待できないと言っても過言ではありません。契約金利による利息額は残債に合わせて増加するため、実際の総返済額はほとんど変わらないケースが多々あります。
かえって返済期間が伸びる
一本化に成功しても、約定返済額をやっと返せるような収支状況では、返済期間がかえって伸びる可能性があります。毎月支払った額の大半が日々加算される利息に充当され、元金(利息計算の元となる残債部分)を効率良く減らすことが出来ないからです。
審査で借り換えを断られる可能性がある
借金の一本化にあたっては、新規契約あるいは増枠のための与信審査を通過する必要があります。審査時点ですでに多重債務の状態に陥っていたり、申込者属性(勤務先や家族構成など)が悪化していたりすると、そもそも成約に至りません。
審査結果を待つあいだ刻一刻と借金の状況は悪化します。一本化できないと分かった頃には、滞納せざるを得ない状況に陥っている可能性が考えられます。
多重債務に陥る可能性がある
最も危険なのは、一本化後に追加借入してしまうケースです。
総返済額が減らしたことが水泡に帰し、追加借入も返済も困難な「多重債務」の状態へと陥りかねないでしょう。
こうした失敗の背景にあるのは、借入件数が1つにまとまることで一時的に上昇する金融信用力です。
借り換え目的でのローン利用を奨める金融機関は、返済計画には関与しません。少しでも早く完済する方法を検討するなら、債務者の目線で解決策を考えられる専門家の力が必要不可欠です。
債務整理の3つのメリット
弁護士と相談しながら行う「債務整理」は、効果的に借金を減らす唯一の方法です。
借金の一本化にはなく債務整理にのみ存在するメリットとして、次の3点が挙げられます。
- 利息の全額カット…弁護士と各債権者との和解交渉は、今後の返済において契約金利0%へ変更することを前提に行います。和解成立時に総返済額が確定し、完済日がクリアになります。
- 過払い金の残債充当…長期間取引のある人は、2010年の利息法改正以前に法定金利を超える利息(=過払い金)が生じている可能性があります。過払い金返還と残債充当を実現させられるのは、法的交渉を行ったケースのみです。
- 督促の停止…債務整理にあたり弁護士と受任契約を結んだ段階で、以降滞納が生じたとしても督促されることはありません。必要な連絡は代理弁護士が全て対応します。
財産処分や強制解約は回避できる
債務整理になかなか踏み切れない理由の多くは「生活が一変することへの恐れ」ではないでしょうか。
裁判所を通さず交渉のみで債務減額を目指す方法(=任意整理)であれば、財産処分は行われません。クレジットカードの強制解約も、発行会社を整理対象から除外することで回避できます。
借金一本化の検討が必要になったときはご相談ください
複数社の債務を1社にまとめる方法は、残債の減額に繋がりません。収支にゆとりがないまま安易に一本化を利用してしまうことで、総返済額・返済期間ともにかえって負担を増してしまいます。
宮重法律事務所では、借金の一本化に踏み切ろうとしたご理由(返済期日のプレッシャー・財産処分や金融ブラック化への不安)に向き合い、ベストな解決策を提案し続けています。
当事務所でのご相談は無料です。お電話・メール・LINEなど、お好きな方法でじっくりとご状況をお聞かせください。