過払い金請求で早期相談をおすすめする理由―消滅時効の基礎知識

過払い金請求権は最終取引日から10年で消滅時効(請求時効)を迎えます。

貸金業者に請求開始の意思を伝えることで時効完成を食い止められますが、厳密な法律要件の理解は必要です。また、返還請求に本格的に着手しても、相手方の業者から誠実な理解が得られない懸念があります。

弁護士による早期着手が必要な理由として、過払い金請求権の消滅時効に関する基礎知識を紹介します。

過払い金請求権の消滅時効は10年

過払い金の発生は、債権者が金銭貸借契約で定めのない利息を得ているという考え方から「不当利得返還請求権」が生じたと解されています。不当利得返還請求には民法で時効が定められており、10年間行使しない時は時効完成による権利消滅に至ります(第167条1項)。

消滅時効の起算点は「最終取引日」

過払い金請求において、消滅時効のカウントが開始するのは「貸金業者と最後に取引を行った日」です。

ここで言う“取引”とは、返済だけでなく借入も含意します。定期返済額のうち本来払うべき利息を超過した部分(=過払い金)は、直後の借入時に残債へ充当されているものとみなすからです。

過払い金の請求時効を止める2つの方法

過払い金請求権の時効完成を止めるには、相応の法律要件を発生させる必要があります。要件のひとつは貸金業者自ら過払い金の存在を認めること(債務の承認)ですが、これは現実的ではないでしょう。

そこで時効完成を定める民法147条では、請求権者から以下いずれかのアクションを起こすことで要件を満たせるとしています。

方法1:催告

消滅時効が止まる第1の法律要件は、口頭または書面上で過払い金請求を開始する旨を伝えることです(催告)。催告によって時効が停止され、過払い金請求権の消滅日が6ヵ月延期されます。

ただし、あくまでも権利消滅日をわずかに遅らせるだけの効果しかないことに要注意です。

債権者が催告に応じないのであれば、延期後の時効完成日までに「裁判上の請求」を開始し、時効中断(起算点へのカウント巻き戻し)を生じさせなければなりません。

加えて、法律上「催告」に効力を持たせるには、電話や普通郵便といった手段は適しません。

代理弁護士からの請求配達証明付き内容証明郵便の送付など、立証能力のある方法を用いる必要があります。

方法2:裁判上の請求

時効中断の要件である「裁判上の請求」とは、支払督促・訴訟・調停などの裁判所で行う請求手続き全般を指します。

催告を経ずに裁判上の請求を行うかどうかは、利用者の一存で決めてかまいません。交渉に応じない方針を固めている債権者の場合は、催告と同時期に裁判上の請求を開始しても良いでしょう。

消滅時効を巡るトラブル

過払い金請求の消滅時効においては、貸金業者に時効完成を狙うような対応を取られるケースの多発が問題です。弁護士を通さず当事者のあいだで解決しようとした場合、請求者側が次のような対応に悩まされることになるのです。

【貸金業者の対応例】過払い金請求手続きのトラブル例

  • 催告に全く応じない(返事が返ってこない)
  • 過払い金を計算するために取引履歴の開示を請求したが、返事が遅い

時効完成前に誠実な対応を得る上で、利用者本人ではなく代理弁護士という立場から請求の意志を示すべきです。請求のプロから回答期限を提示しながら必要な伝達を行うことで、迅速で精神的ストレスのない返還が実現します。

請求時効に関わらず早期相談をおすすめする理由

過払い金請求を検討中である場合、時効完成によらず早めに専門家の介入を得る必要があります。貸金業者と交渉に入る前に、請求者側で返還を求める金額を計算する必要があるからです。

具体的には、まず契約内容や取引履歴を調査し、払いすぎた利息の金額・返済時期を特定した上で、不当利得返還請求権の法定利率(2020年3月までは5%・以降は3%)を上乗せして請求額を確定させます。

返還を求める金額を確定させる際は、債務整理の実務経験豊富な弁護士でも最短1週間程度の時間を要します。調査内容の確認方法や計算方法が不明な状態から開始すると、いっそう長引いてしまうでしょう。

そもそも過払い金が生じているか分からないケースでも、弁護士に依頼することで時効完成を阻止しながら詳しく調査できます。

まずは相談してみることが大切です。

お持ちの資料だけで気軽にご相談いただけます

過払い金請求権の消滅時効は「催告」または「裁判上の請求」で阻止可能ですが、交渉の着手にあたっては調査必須です。取引の記録は刻一刻と散逸する可能性があることも踏まえ、時効完成に依らず早めにアクションを起こすことが大切です。

宮重法律事務所では、取引当時の資料がまったくない状態からでもご相談いただけます。

空いた時間に専門家の見解をお尋ねいただけるよう、ご来所・お電話・メールの他にLINEでのお問い合わせにも対応しています。まずはお気軽にご利用ください。

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