個人再生が失敗するケースとは―棄却・不認可・廃止・取消しに至る原因
個人再生による債務圧縮を実現するには、民事再生法の要件に当てはまっているか裁判所に判断してもらう必要があります。そもそも要件を満たしていない・再生認可決定後の弁済の望みが低い等の判断がなされた場合、手続きを認めてもらうことは出来ません。
事前に個人再生が失敗に終わる4つの要因を押さえ、専門家の判断を仰ぎながら進めることが大切です。
個人再生が失敗する4つの要因
個人再生の手続きが失敗に終わるケースには、申立ての「棄却」・手続き中の「廃止」・提出した再生計画案の「不認可」・再生計画認可決定後の「取消し」の4パターンがあります。
これらの裁判所に認めてもらえない要因は、以下いずれかに集約されます。
【個人再生が失敗する4つの要因】
- 申立て要件を満たしていない
→棄却・廃止の原因 - 再生計画案の不備or提出遅れ
→廃止の原因 - 再生計画案に債権者が賛成しない
→(小規模個人再生の場合)廃止の原因 - 再生計画案通りの弁済が出来ない
→不認可・取消しの原因
要因①申立て要件を満たしていない
個人再生に着手するにあたり、まず再生手続開始の申立て要件を整理しておく必要があります。せっかく書類を準備しても、以下要件を満たさない場合は「棄却」に至ってしまいます。
【個人再生の申立て要件】
- 将来に渡って継続反復的な収入を得る見込みがある(第241条2項4号)
- 住宅ローンを除く残債が5000万円を超えていない(第231条2項2号)
- 計画弁済総額が最低弁済額および清算価値※以上である(第231条2項3~4号・7号)
※清算価値とは
…債務者の財産の売却価値であり、自己破産したときに債権者に分配できる金額を指します。債権者の利益を最大化するために、個人再生後の弁済額は清算価値を下回ってはならない(清算価値保障原則)とルール化されています。
無事に申立てが認められても、本要件を満たさないことを理由に、再生計画認可決定の確定前に廃止されるケースがあります(第192条1項・第192条1項)。
あらかじめ手続き中の家計変化について見通しを立て、最低でも追加借入に頼らない終始設計をしておくべきです。
特に注意が必要なのは、その性質上「継続反復的な収入を得られる」とは言い難い個人事業主や完全歩合給の会社員です。
当事務所では、収入に変動のある方でも再生認可決定を得られるよう、適宜アドバイスや対策を実施しています。
要因②再生計画案の不備or提出遅れ
個人再生は手続き中に「再生計画案」(債務圧縮後の弁済計画・住宅ローン特例の条項を列記したもの)を書面で提出する必要があります。
再生計画案の提出には期限が設けられており、不備も遅れもなく提出しなければなりません。本条件を満たせなかった場合、手続きの廃止が行われます(民事再生法第191条・第243条)
再生計画案の策定にあたっては、債務者の状況を鑑みて裁判所に認められ得る内容を網羅しなければなりません。独力で対応するのは難しく、作成を代行できる専門家の力が必要です。
要因③再生計画案に債権者が同意しない
個人再生には給与所得者等再生・小規模個人再生の2種類の手続きがあります。
より債務圧縮条件が緩やかな小規模個人再生が主流となっていますが、再生計画認可決定にあたっては債権者による書面決議(再生計画案への賛否を問う決議)があることに要注意です。
具体的には「不同意が債権者の半数以上」および「同意しなかった債権者が再生債権総額の50%以上の権利を持つ」状況に陥ると、不認可に至ってしまいます(第230条6項)。
申立ての際に再生計画案の策定まで見込んでおき、不同意多数と予測される場合には書面決議のない給与所得者等再生に切り替える等の対策が欠かせません。
要因④再生計画案通りの弁済が出来ない
申立てを受理した裁判所が最も重視するのは、債務圧縮後の弁済に実現性があるかどうかです。手続き中に著しく収入が下がるなど、計画通りの弁済が出来そうにない状況は、再生計画案の不認可事由にあたります(第174条2項)
また、再生計画認可決定のあとに滞納が生じても、債権者からの申立てまたは裁判所の職権で取消しが行われます(第189条)。
地裁のなかには手続き中に「履行可能性テスト」を実施し、弁済実現性を確かめる目的で債務者に積立を開始させるケースもあります。
個人再生を成功させるためのポイント
個人再生を成功させるには、適正な手続き・速やかな家計再建を両立させる必要があります。
そもそも申立て要件に当てはまるのかを慎重に検討し、事例によっては対策も欠かせません。また、再生認可決定後の家計に問題がないことをアピールするため、手続き中から収支に弁済のゆとりを持たせる必要があります。
個人再生の手続きはお任せください
個人再生で債務圧縮を実現するための手続きは、経験豊富な弁護士に任せると安心です。
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