自己破産は家族の暮らしにどう影響するのか
「家族に迷惑をかけてしまう」という不安が強く、自己破産手続きが必要と分かっていても行動に移せないでいるのではないでしょうか。
破産手続き中の財産処分はあくまでも申立人本人に対して行われ、自宅に立ち入られる等の日常生活が乱されることもありません。一方で「同居する扶養家族の生活」「保証人付き債務」への影響は甚大です。
本記事解説の家族の暮らしへの影響を正しく理解することで、家族とともに不安を拭いながら必要な説明を実施できます。
破産申立人以外に影響が及ばないポイント
家族の不安を解くためにまず説明しておきたいのは、破産手続き中に課せられるデメリット(下記参照)が申立人以外に及ぶことはない点です。
- 職業制限・身分制限・移動の制限
- 官報公告(氏名住所の官報掲載)
いずれの制限も破産手続き中のみ被るものであり、手続きが終われば解消されます。
手続きによる日常生活への影響を心配する家族には、さらに以下の3つのポイントを説明することで不安を解消してもらえます。
債権者から督促されることはない
自己破産するかどうかに関わらず、金銭貸借契約に関与していない家族に債権者が督促を行うことは、法律で禁止されています(貸金業法第21条)。裁判所から家族に何らかの通知が行われたり、あるいは代理で手続きを求められたりすることもありません。
選挙権・身分証の記載内容に影響はない
自己破産した事実は、戸籍謄本・住民票・その他身分証には一切掲載されません。投票権などの市民生活に欠かせない権利も、破産したかどうかに関わらず保護されます。
自宅には立ち入られない
「申立人が手続きに非協力的」等のよほどの理由がない限り、破産者の自宅に裁判所関係者が訪れることはありません。資産調査・財産処分ともに、各金融機関への開示請求等の方法で進められます。
自己破産がもたらす家族への悪影響
日常生活への影響はほとんどない一方で、財産処分による生活環境の変化・保証債務への悪影響は回避できません。家族との資産共有状態をよくチェックし、以下の点については事前に説明しておくべきです。
財産処分による影響
破産手続きが開始すると、申立人名義で契約している住宅・自家用車・各種保険の掛金・教育ローンはすべて処分されます。
これら処分対象となる財産に同居家族と共用のもの(あるいは家族のために契約したもの)が含まれるなら、居住環境やライフプランが大きく変わることについて必ず理解を求めるべきでしょう。
破産者が保証人だったときの影響
また、自己破産する人自身が保証している金銭貸借契約は、保証人変更の手続きが必要です(民法第450条2項)。どうしても保証に応じてくれる親族や知人が見つからない時は、主債務者である同居家族へ一括請求が行われます(民法137条3号)。
したがって、配偶者あるいは子ども名義の住宅ローン・貸与型の奨学金など、申立人が契約に関与している債務への影響は回避できません。
家族が破産者の保証人だったときの影響
破産債権に対して家族が保証を行っていた場合、その影響は深刻です。
主債務者が自己破産の申し立てを行った時点で、債権者から保証人へ一括請求が開始されます。自己破産で免責を得られるのは主債務者の返済義務のみであり、保証債務(保証している人が債権者に対して持つ責任)は免れ得ません。
いったん一括請求が開始されると、分割払いへの変更を求めて債権者と交渉する必要があります。保証人にまったく資力がないケースでは、契約時に設定した抵当権が実行されて不動産を失う・主債務者と共同での自己破産を余儀なくされる等のデメリットを強いることになります。
以上の点を考慮すると、保証債務を負っている家族には最優先で自己破産することを伝えるべきです。
金融ブラック化による影響
破産手続き時点での家族への影響は小さくとも、住宅購入や教育のために今後ローン利用が必要になる可能性があるケースは要注意です。
金融機関での与信審査に活用される「信用情報」に自己破産した事実が掲載されるため、金銭貸借契約の名義人あるいは保証人になることが当分できなくなるためです。
実家の両親や配偶者など、まとまった資金が必要になるシーンで破産した人の代わりに協力してくれる人物を探す必要があります。
破産に伴う生活の悩みもお任せください
自己破産は日常生活への影響こそ少ないものの、住環境や移動手段の変化・保証債務の一括請求などのデメリットを家族に強いることは否めません。
宮重法律事務所では、破産ケース毎に生じる影響を漏らさずご説明しています。
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